今回は、『怒鳴る人への対処法』についてお話します。怒鳴る相手に対して自分がより具体的に実践できることをご紹介します。
怒鳴るとは?
人を怒鳴るという行為、それは、感情表現としては適切ではなく、「暴力」や「攻撃」と同じ行為にあたり、不適切で受け入れるべきでないものである、といえます。
例えば「パワーハラスメント」とは、最近社会でも広く認知され2020年6月にはパワハラ防止法という法律も施行されるほど、その被害の深刻さが問題視されている、
他者に苦痛を与えるいやがらせやイジメのことですが、「怒鳴る」という行為は、パワハラの中でも代表的なものとしてもよく挙げられているのです。
怒鳴ることは時に、相手に深刻な心身のダメージ
このように、「怒鳴る」という行為は、不当で許しがたい行為です。
それだけでなく、怒鳴られた人の心や身体に深刻なダメージを与えることが分かっています。
自信喪失に陥って人生に対する意欲を失ってしまい、うつを発症することもあります。怒鳴られた経験がトラウマ(心的外傷)となり、動悸やめまい、摂食障害といった身体症状として現れることさえあります。
もし今あなたが、職場や学校や家庭で誰かにいつも「怒鳴られて」いて苦しんでいるなら、ダメージが深刻になる前に、自分を守る必要があります。
怒鳴る人への対処法
怒鳴る人への実践的な対処方法を、今回は2つお話しします。
- 1つ目が、メタ認知
- 2つ目が、距離をとる
です。一つずつ、くわしくみていきます。
メタ認知とは
一つ目はメタ認知能力を使って自己コントロールを行う方法です。
「メタ認知」とは、少し聞きなれない言葉かもしれませんが、分かりやすく言うなら、自然に行動し考えている自分自身を、一段上の視点からみることです。
人間には、自分で自分のことを知り、コントロールする力があります。
例えて言うなら、頭の中にもう一人の自分がいて、自分のことを監視し、コントロールする力が「メタ認知能力」であり、「自分の心を知る力」「自己モニタリング能力」ともいえます。
例えば怒鳴られている最中にもこのメタ認知能力を使うことで、自分の感情コントロール・状況の整理をし、受けるダメージを減らすという事が出来ます。
セルフモニタリングと自己受容
まず、怒鳴られてしまったら、その場ですぐに、自分が今どんな反応をしてしまっているのか、冷静に一段上から観察してみてください。
例えば、
- 「また私、頭が真っ白になってフリーズしてしまっているな」とか、
- 「また自分を責めて自己嫌悪に陥っているな」とか、
- 「とにかく早く終わらせたくて必要以上に誤ってしまっているな」とか、
- 「言い返したいのに言葉に出来なくて情けなく感じているな」
といった具合に、いつもだったら無意識のうちに流してしまっている自分の反応や思考の癖を、客観的に認めて受けとめるのです。
もちろん、「怒鳴られている」といった極限の緊張状態で、このように冷静にメタ認知を行う事は、初めはとても難しいことでしょう。
そういう時は、怒鳴っている相手がいなくなってから、もしくはその日の夜寝る前になってからなど、後になって落ち着いて振り返りが出来るタイミングでメタ認知を行う、という事から始めても良いと思います。
練習し続けることで、段々と自分自身を客観的に受け止めて自己分析が出来るようになることが重要です。
例え、それがみじめでかっこ悪い自分であっても、否定せずにありのままを受け止めてあげることも、ここでは大切なプロセスとなります。「恐れ・怒り・悲しみ」を感じた自分を責めたり恥じたりせずにまずはそのまま受けとめましょう。
受けとめられずに否定したり押し殺した感情は、その人の内にため込まれていき、いずれ何かのきっかけがあった時、不健全な形で爆発して、自分自身や周りの人を傷つけてしまう事があるからです。
相手を冷静に分析する
次に、怒鳴っている相手に対する認知を行います。
「すぐに怒鳴る人には特徴がある」とお伝えしました。
慢性的にストレスを抱えている、劣等感を抱えている、脳に問題を抱えているなどの特徴です。
これらをヒントにして、目の前で怒鳴っている相手を冷静に心の中で分析してみるのです。
例えば、自分に対して怒鳴っているのが会社の先輩だとします。
その先輩は現在大きなプロジェクトを任されているのですが、それが思い通りに進まないので最近イライラしており、さっきも上司から呼ばれてプレッシャーをかけられて帰ってきたという背景があるとしたら・・・
怒鳴っているのは、先輩が自分の抱えている不安やストレスを発散するためではないか・・・といった推測や分析をすることが出来ます。
自己コントロール
そうすると、
「仕事のミスを理由に先輩から怒鳴られているけど、それはきっかけにすぎなくて、実は先輩は自分のストレス発散のために怒鳴っている可能性もあるな」
「怒鳴られているこの状態を、全部自分のせいだとまで思い詰める必要は無いな」
といった風に、自分ばかりを全面的に責めて萎縮してしまうといった緊張状態から脱し、怒鳴られている状況を以前よりも冷静に整理して受け止められるようになるでしょう。
「フリーズしてしまっている自分」「自己嫌悪に陥っている自分」に対しても、「そんなに緊張して怖がらなくても大丈夫。少し深呼吸して、顔をあげみよう。」と働きかけてあげることで、心と体にも余裕を取り戻すことが出来るようになります。
変えられるものと蹴られないもの
ここで大切なのは、自分にとって「変えられないもの」 と「変えられるもの」を整理して切り分けることです。
怒鳴られるきっかけを作ってしまった自分の仕事のミスについては、今後丁寧に見直すなど、ある程度予防のために出来ることがあるなら、「変えられるもの」として取り組めばよいでしょう。
一方で、「変えられないもの」は自分の担当外のものとして手放します。
先輩の抱えているストレスや不安は、私には変えられないものなので、それを発散するために怒鳴られていることに関しては必要以上に自分のせいだと感じたりせずにスルーして良いのです。
自分のミスは謙虚に受け止めつつ、相手の批判を言われるがまますべて信じて自信を失ってしまう必要はありません。
自分の良い点に対する確信まで、無くさないようにしましょう。
相手との距離を取る
相手との距離を取る方法には2つあります。
一つ目は、感情的な距離を取ること
二つ目は、物理的な距離を取ることです。
①感情的な距離を取る
例えば相手が上司・親・教師・お客の場合、相手との物理的距離を取ることは難しいです。
職場や家庭、学校などで、毎日顔を合わせなければなりません。
そのような時は、感情的な距離を取る方法がおすすめです。
これは、相手とひと言も話さず、無視をするという事ではありません。
用件があるときだけ、事務的に対応するということです。
仕事、もしくは生活に必要最低限のコミュニケーションとして考え、事務的に対応するようになると、相手から批判的なことを言われても、あまり気持ちに入ってこないようになります。
先ほどご紹介したメタ認知とセルフコントロールで心身の動揺を収めることと並行して行うとより効果的です。
➁物理的な距離を取る
一方、感情的な距離を取るだけでは自分を守れないというケースももちろんあり得ます。
この場合には、物理的に距離を取るという方法が有効です。
職場の場合なら、異動願いや転職をするという選択があるでしょう。
また、既に自分が成人していて別々に暮らす親子関係であったり、友人知人の場合は 、やり取りや会う頻度を減らす、被害がより深刻な場合については、縁を切るという事も含めて考えて良いでしょう。
付き合いをやめられない事情は様々あるでしょうが、その人と会うことを想像したときに、「ぜひ会いたいし楽しみだ」と思えるか、それとも「あまり会いたくないけど会わなければならない理由があるから仕方なく」会おうとしているのか、改めて考えてみてください。
まずは、自分の正直な気持ちを大切にして良いのです。
また相手が、習い事の先生やかかりつけの医師等の場合、そこに通う事で自分や家族に心身の負担が少しでも生じるのであれば、別の教室や病院に思い切って変えるという選択もありでしょう。
こうあるべきだからとか、相手に恩があるからとか、理由を挙げればきりがなく、いつまでたっても決断できません。
まとめ
判断基準は、自分の幸福度です。
私たちは、自らの決断と行動によってのみ、幸せな人生を取り戻すことが出来るのです。